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ヒエログリフについて
ヒエログリフとは、古代エジプトの象形文字です。
以下の変換表のアルファベットとヒエログリフを相互に変換します。 「異体字」の括弧なしのヒエログリフは、ヒエログリフからアルファベットへの一方向のみ変換します。 括弧付きのヒエログリフは、参考としてのみ掲載しており、変換はしません。
| アルファベット | ヒエログリフ | 意味 | 異体字 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| A | 𓄿 | ハゲワシ | 𓂝 | |
| B | 𓃀 | 足 | ||
| C | 𓎡 | 籠 | (𓋴) | Kと同じヒエログリフを使用。再変換時はKになる。「𓋴」はSの音。 |
| D | 𓂧 | 手 | 𓂽 | |
| E | 𓇋 | 葦 | (𓂝) | Iと同じヒエログリフを使用。再変換時はIになる。 |
| F | 𓆑 | ツノメクサリヘビ | ||
| G | 𓎼 | 壺置き | 𓅼 | |
| H | 𓉔 | 中庭 | 𓎛, (𓐍) | 「𓐍」は強いKhの音。 |
| I | 𓇋 | 葦 | (𓇌) | Eと区別するなら「𓇌」。 |
| J | 𓆓 | コブラ | ||
| K | 𓎡 | 籠 | ||
| L | 𓃭 | ライオン | ||
| M | 𓅓 | フクロウ | 𓐝 | |
| N | 𓈖 | 水 | ||
| O | 𓍯 | 投げ縄 | (𓅱), (𓏲) | 「𓍯」はWでも使用されている「𓅱」の代用。 |
| P | 𓊪 | むしろ | ||
| Q | 𓈎 | 丘 | (𓎡) | |
| R | 𓂋 | 口 | ||
| S | 𓋴 | 折り畳んだ布 | (𓊃), 𓈙 | 「𓈙」はSHの音。 |
| T | 𓏏 | パン | 𓍿 | 「𓍿」はCH/TJの音。 |
| U | 𓏲 | 渦巻き | (𓅱) | 「𓏲」はWでも使用されている「𓅱」の代用。 |
| V | 𓆑 | ツノメクサリヘビ | Fと同じヒエログリフを使用。再変換時はFになる。 | |
| W | 𓅱 | ウズラの雛 | (𓏲) | |
| X | 𓎡𓋴 | K+S | 𓎡𓊃, 𓈎𓊃, 𓐍, 𓄡 | 「𓐍」や「𓄡」は1文字で代用する場合。 |
| Y | 𓇌 | 二本の葦 | 𓏭, (𓇋) | |
| Z | 𓊃 | ドアの閂 |
上記の変換表は、エジプト学における単子音文字 (一音文字) をベースに、現代のアルファベット26文字へ便宜的に割り当てたものです。 古代エジプト語の厳密な学術的翻字ルールとは一部異なりますが、主に観光地の土産物や名前変換ソフト、子供向けの学習用として、現代の名前や単語を直感的にヒエログリフ化する際に世界中で広く使われている形式です。
単子音文字は、ヒエログリフの中で「1つの音」を表す約24種類の文字が基礎となっています。 例えば「B」「F」「M」「N」「R」などは、学術的にもその音に近い役割を持っています。
母音 (A, E, I, O, U, Y) は、古代エジプト語の書き言葉ではヘブライ語やアラビア語と同様に、原則として表記されません。 そのため、本来ヒエログリフに母音専用の文字は存在しませんが、現代の変換表では、半子音 (喉の音や『Y』に近い音など) を母音の代わりに当てることで、英語の綴りをそのまま変換できるようにしています。
「L」「O」「V」などは、本来の単子音文字リストには含まれません。これらは、アレクサンドロス大王やクレオパトラといったギリシャ系の名前 (外来語) を表記するために、プトレマイオス朝 (ギリシャ系王朝) 以降に発達した特殊なルールに基づいています。 例えば「L」の「𓃭 (ライオン)」は、本来は「RW」という2つの音を表す文字ですが、クレオパトラ (Cleopatra) の名前に含まれていたことから、現代の変換表では「L」として定着しています。
本来のヒエログリフは「音を表す文字」の後に、その単語のカテゴリー(人、動物、動きなど)を示す「決定詞(限定符)」を置くのがルールです。 DenCodeでの変換結果には含まれませんが、末尾に以下の記号を添えることで、より本来のヒエログリフに近い表記になります。
| 決定詞 | 意味 | 用途 |
|---|---|---|
| 𓀀 | 男性 | 男性名。 |
| 𓁐 | 女性 | 女性名。 |
| 𓀾 | 神・王 | 神格化したい、または非常に高貴な表現。 |
| 𓀼 | 尊い人物 | 敬意を込めた表現や、年長者への名前。 |
| 𓀋 | 子供 | 子どもの名前。純粋さや成長の願い。 |
| 𓏛 | パピルスの巻物 | 知識、教育、知性を重んじる。 |
| 𓀠 | 祈る人 | 感謝、誠実、神聖なイメージ。 |
| 𓀙 | 老人・賢者 | 知恵、経験、長寿を願う。 |
| 𓃡 | 犬 | 犬の名前。忠実なイメージ。 |
| 𓃠 | 猫 | 猫の名前。猫を象徴としたい。 |
| 𓃗 | 馬 | 馬の名前。活発、速さ。 |
| 𓃹 | うさぎ | うさぎの名前。活発、素早さ、生命力。 |
| 𓆜 | 魚 | 魚の名前。豊かさ、水、再生。 |
| 𓄛 | 動物 | 動物全般。 |
| 𓅄 | ハヤブサ (ホルス神) | 勝利、守護、強さの象徴。 |
| 𓆗 | コブラ (女神) | 魔除け、知恵、美しさの象徴。 |
| 𓊖 | 町・場所 | 特定の土地や故郷にルーツがある。 |
変換した名前をカルトゥーシュで囲むのも良いでしょう。 カルトゥーシュとは、古代エジプトの王 (ファラオ) や王妃の名前を囲むために使われた、特別な「楕円形の枠」のことです。 古代エジプトにおいて、名前はその人の魂の一部であり、名前が失われることは永遠の死を意味しました。 そのため、王の名前が傷つかないように、また邪悪なものから守られるようにという願いを込めて、「シェヌ (Shen)」と呼ばれる聖なる縄の結び目で名前が囲まれました。 「カルトゥーシュ」という言葉は、ナポレオンの遠征隊がこれを見た際、形が銃の弾薬筒 (フランス語で cartouche) に似ていたことから名付けられたものです。
以下は、女性の名前「Lisa」の最後に、女性であることを示す決定詞「𓁐」を置き、カルトゥーシュで囲んだ例です。 縦書きで書く場合は、カルトゥーシュの結び目が一番下に来るように配置します。
変換表の流派と違い
ヒエログリフを現代のアルファベットに当てはめる際、どの記号を採用するかは、国や美術館、あるいは研究者の「流派」によっていくつかの違いがあります。 当サイトの変換表では、これらの違いを「異体字」として掲載しています。
1. 大英博物館とルーヴル美術館の違い
もっとも有名な違いは、母音の「O」の扱いです。
- 大英博物館 (The British Museum) スタイル:
- 一般的に「O」を「W」と同じ「𓅱 (ウズラの雛)」にまとめます。これは初心者が覚えやすいよう、音のグループを最小限に絞った形式です。
- フランス (ルーヴル美術館等) スタイル:
- フランスのエジプト学の伝統 (シャンポリオンの音写ルール) を汲み、視覚的な区別を優先して「O」に「𓍯 (投げ縄)」を割り当てる傾向があります。これにより、「W」が混在しても記号が重複せず、見た目が美しくなります。
2. 公式ガイドに見られる専門的な割り当て
大英博物館が発行する公式書籍『Write Your Own Egyptian Hieroglyphs』では、さらに踏み込んだ専門的な割り当てがされています。
- O・U: 「𓅱」の草書体(ヒエラティック)に由来する「𓏲 (渦巻き)」を割り当て、鳥の記号が重複するのを避けます。
- E: 「𓇋 (葦)」の代わりに、喉の音に近い「𓂝 (腕)」を用います。
- X・Y: より強い音である「𓈎𓊃 (Q+Z)」を「X」に、書記の略体である「𓏭 (二本線)」を「Y」に当てるなど、歴史的な正確さを重視します。
3. デザインや時代背景による使い分け
音の珍しさや、見た目のバランスによっても記号は使い分けられます。
- S: 「𓋴 (折り畳んだ布)」と「𓊃 (ドアの閂)」は、どちらも標準的で、多くの博物館で併記されています。
- G: 古代エジプト語では比較的珍しい音であり、時代や地域によって表記に揺れが見られるため、「𓎼 (壺置き)」のほかに「𓅼 (野鴨)」が使われることもあります。
- X: 独立した文字が存在しないため、基本的には「K+S (𓎡𓋴)」で表現しますが、スペースが限られている場合は「𓐍」や「𓄡」といった1文字で代用されることも一般的です。
ヒエログリフの歴史
ヒエログリフは、紀元前3200年頃の先王朝時代末期に登場した、世界で最も古い文字体系の一つです。 古代エジプト人はこの文字を「メドゥ・ネチェル(神の言葉)」と呼び、主に神殿の壁や石碑、王の墓などに刻みました。 ギリシャ人が後にこれを「ヒエログリフ(聖なる彫刻)」と呼んだことが、現在の名称の由来となっています。
ヒエログリフは美しい絵文字ですが、石に刻むには時間がかかります。 そのため、歴史の中で実用的な変体が生み出されました。
| 文字の種類 | 説明 |
|---|---|
| ヒエログリフ(聖刻文字) | 儀式や碑文用の正式な文字。 |
| ヒエラティック(神官文字) | ヒエログリフを簡略化した草書体。パピルスに葦のペンで書く際に使われました。 |
| デモティック(民衆文字) | 紀元前7世紀頃から登場した、さらに簡略化された書体。役所の書類や日常生活で広く使われました。 |
エジプトがギリシャやローマの支配下に入ると、キリスト教の普及とともに伝統的な信仰が衰退し、ヒエログリフを使える神官もいなくなりました。 紀元後394年のフィラエ神殿の碑文を最後に、ヒエログリフはその読み方すら忘れ去られ、その後約1500年もの間、誰も解読できない「謎の記号」となりました。
ヒエログリフの解読
1798年、フランスのナポレオン・ボナパルトは軍隊とともに、160人もの学者や芸術家を連れてエジプトへ遠征しました。目的は軍事占領だけでなく、未知の古代文明を調査することにありました。 翌1799年、エジプトのラシード (ロゼッタ)という町で、要塞を築いていたフランス軍の兵士が、奇妙な文字が刻まれた黒い玄武岩の石碑を発見しました。これが、後に世界で最も有名な石碑となる「ロゼッタ・ストーン」です。
ロゼッタ・ストーンには、同じ内容の布告文が上段・中段・下段で3つの異なる文字で刻まれていました。
| 段落 | 使用されている文字 | 役割 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 上段 | ヒエログリフ(聖刻文字) | 神への報告 | 神殿の壁などに刻まれる最も正式で聖なる文字。ロゼッタ・ストーンが発見された19世紀初頭では、すでに読み方が失われ、誰も読めなかった「神の文字」。 |
| 中段 | デモティック(民衆文字) | 人々への公表 | 古代エジプトで広く日常的に使われていた実用的な文字。エジプト人の役人や一般市民に向けたもの。 |
| 下段 | ギリシャ文字 | 統治者への報告 | 古代エジプトの支配階級(プトレマイオス朝)が公用語としていた文字。 |
この3つの異なる文字の中で、19世紀の学者が唯一読むことができたのは下段のギリシャ文字だけでした。 この「ギリシャ文字が読める」という事実が、1500年もの間解読できなかったヒエログリフの謎を解く大きなヒントとなります。
イギリスのトマス・ヤングなど多くの学者が解読に挑みましたが、完全な解読に成功したのはフランスの学者ジャン=フランソワ・シャンポリオンでした。
物理学者・数学者であるヤングは、数学的なアプローチで解読に挑みました。 ヤングは、ロゼッタ・ストーンの上段 (ヒエログリフ) においてカルトゥーシュが登場する回数が、下段 (ギリシャ文字) の「プトレマイオス (Πτολεμαῖος)」という単語の登場回数と一致することを確認します。 そして、プトレマイオスのカルトゥーシュの中で、最初のいくつかのヒエログリフが P-T-O-L であることを突き止め、他の音についても一部に誤り(重複や音の取り違え)がありましたが、それでも非常に惜しいところまで推測していました。
| ヒエログリフ | 𓊪 | 𓏏 | 𓍯 | 𓃭 | 𓅓 | 𓇌 | 𓊃 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ギリシャ語 | Π | τ | ο | λ | ε | μ | α | ῖ | ο | ς |
| アルファベット | P | T | O | L | E | M | A | I | O | S |
(古代エジプト人は、ギリシャ語の綴りをそのままヒエログリフに写すのではなく、母音を省略したり、複数の音を1つの記号にまとめたりして、自分たちの言語の響きに近い形 P-T-O-L-M-Y-S で刻んでいました。ここでは P-T-O-L のヒエログリフが重要です。)
彼は「外国人の名前を記す時だけ、エジプト人はヒエログリフを表音文字 (音を表す文字) として使った」という仮説を立てました。 しかし、ヤングは「ヒエログリフの大部分は依然として表意文字 (意味を表す文字) であり、音を表すのは王の名前など例外的な場合だけだ」と考え、それ以上の解読を断念しました。
ヤングの解読結果を踏まえ、言語学者のシャンポリオンは、ロゼッタ・ストーンにある「プトレマイオス (PTOLEMAIOS)」と、別の石柱 (フィラエのオベリスク) にある「クレオパトラ (KLEOPATRA)」のカルトゥーシュを並べて比較しました。 そして、両方の名前に含まれる「P」「L」「O」「T」がそれぞれ対応する位置に同じヒエログリフの記号が現れることを突き止めます。
| ヒエログリフ | 𓎡 | 𓃭 | 𓇋 | 𓍯 | 𓊪 | 𓄿 | 𓏏 | 𓂋 | 𓄿 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ギリシャ語 | Κ | λ | ε | ο | π | ά | τ | ρ | α |
| アルファベット | K | L | E | O | P | A | T | R | A |
2つの名前に共通する「P (𓊪)」や「L (𓃭)」などの記号が、それぞれの正しい位置に現れたこと。これにより、ヒエログリフは「表意文字 (意味を表す文字)」だけでなく、現代のアルファベットのように「表音文字 (音を表す文字)」であることを、シャンポリオンが世界で初めて証明しました。
シャンポリオンはさらに、自身が習得していた十数か国もの言語の中でも、特にコプト語(古代エジプト語の末裔で、当時のエジプトのキリスト教徒が使用していた言語)に注目しました。ヒエログリフを音読した際の音がコプト語と酷似していることに気づき、そこから各記号が持つ具体的な「意味」を次々と特定していきました。
1822年9月、彼はついに解読の仕組みを解き明かし、「見つけた! (Je tiens mon affaire!)」と叫んで兄の腕の中に倒れ込んだと言われています。